2011年1月18日火曜日

Why Should I Cry For You

昨年9月、横断歩道で大型トラックにひかれる事故に遭遇しました。


10トンのトラックだったのですが、奇跡的に左の肋骨を5本骨折しただけで済みました。


医師の見解では、9割以上即死していた状況だったそうです。


入院初日のベッドの上。


その時は痛みで寝返りも出来ず、唯一出来る事は考える事だけ。


「事故を避ける事は出来たのか?」


を考えると、結論は


「NO」


青信号で横断歩道を渡っている時に、視界の外から接近するトラックを確認する術はありません。



そう考えると、今この場でベッドで寝ている僕は、パラレル世界では遺体安置所にいて引き取られるのを待っているわけです。



人生を振り返る事もなく、

恐怖を感じる事もなく、

家族に別れを言うでもなく。


そして、家族をはじめ、様々な知人や関係者は、僕のいない世界で残される。


「死」という言葉は誰でも知っていて、いつか訪れる事は知識では知っている。


でも、漠然と、


「死」はずっと先の延長線。そしてその後の終焉


と思っていました。


でも、その時の僕は、なんの覚悟も後悔もドラマもなく、日常に「死」が寄り添っていた。


人生の延長の先の最後のイベントに「死」があるのではなく、

各ステージでランダムに発生する状況が「死」であり、それは「生」の対局ではなく、不可分な要素なんです。




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妻が父親を失ったのは14才の時です。


結婚当初、彼女があまり父親の事を語る事はありませんでした。



ただ、



「お父さんが死んだ時、まったく悲しくなかった。涙も出なかった。」




と言っていただけ。



最近になって、少しづつ、父親との思い出を話すようになりました。



・小さい姉妹を並べて、買ったばかりのフィルムカメラで写真を撮ろうとするけど、操作に手間取り、シャッターを押す時には、二人ともふくれてしまって変な顔の写真だった。




・音楽が好きだったので、お酒を飲みながら姉妹を座らせて、彼のアイドルであるカラヤンの素晴らしさをマニアックに延々と語って、さらに姉妹の不興を買った。




不興を買った話題ばかりだけど、妻が語るその描写は、とても生き生きしていて、父親に対する愛情が感じられます。




「でも、とても優しい人だった。」




父親をそう語るのも始めて聞いた気がします。



結局、彼女が父親との別離を消化できるまで、すごく長い時間がかかったんでしょう。



もしかしたら、最近まで、父の不在を納得していなかったのかもしれません。




人は人と影響しあう事で自我を形成する。


人と接する事で、自分と人の境界線を探り、不思議な事に、独立した存在になる。


彼女の当時の年齢では、父親との境界線があいまいで、彼女にとって、それは不可分の自分の心のピースだったのかもしれません。





もう少しすると、僕は彼女の父親が他界した年齢になります。


そして、それを過ぎて僕が生きているなら、当然ながら、彼女の父親との年齢は逆転し、父親は思い出の中でそのままだけど、僕は年老いていく。


とても不思議な気がします。



生きているのを変化する事だと考えれば、僕は紛れもなく、今は生きている。


でも、いろんな記憶や、彼女の価値観の中に父親は死後も生きている。


彼女は長い年月をかけて、父の不在を理解したけど、それと同時に、始めて父親からの愛情も理解した。そして父親への愛情も理解した。



死が不可避で、避ける事の出来ないものなら、死後に、家族や知人の心にそのように残っていけたら嬉しいです。



そして、自分を知る人達も全て他界した時が、それが本当の意味での「死」なんでしょう。









Sting.

Why Should I Cry For You 
1991


Under the dog star sail 
天狼星の下、舟は進む
Over the reefs of moonshine
Under the skies of fall 
月明かりに照らされた岩礁と秋空の狭間
North, north west, the stones of Faroe
北北西にフェローの岩が見える


Under the Arctic fire
Over the seas of silence
北極星の瞬きと
海の静寂の狭間
Hauling on frozen ropes 
凍てついたロープを手繰り寄せる
For all my days remaining 
僕に残された日々ずっと
But would north be true? 
でも、北が進むべき道なのだろうか?

All colors bleed to red 
全ての色が、血の朱に噴き出す
Asleep on the ocean's bed 
大海に抱かれて眠り
Drifting in empty seas
空虚な海を漂う
For all my days remaining 
僕に残された日々ずっと
But would north be true? 
でも、この道でいいんだろうか?
Why should I?
Why should I cry for you? 
どうして僕が?
どして僕があなたの為に泣かないといけないんだろう?
Dark angels follow me
Over a godless sea 
神無き海を闇の天使が僕についてくる。
Mountains of endless falling, 
いつまでも崩れていく山々
For all my days remaining,
僕に残された日々ずっと
What would be true? 
何が正しいんだろう?

Sometimes I see your face,
The stars seem to lose their place 
時折君の顔を思い浮かべると、
瞬く星々が消えていくようだ
Why must I think of you? 
どうしてあなたの事を考えないといけないんだろう?
Why must I? 
どうして僕が?
Why should I? 
どうして?
Why should I cry for you? 
どうして僕があなたの為に泣かないといけないんだろう?
Why would you want me to? 
なぜ僕に泣いて欲しいんだ?
And what would it mean to say,
That, "I loved you in my fashion"? 
それを言葉にする事になんの意味があるんだろう?
「僕なりに愛していた」って

What would be true? 
なにが正しいんだ?
Why should I? 
どうして
Why should I cry for you?
どうして僕は君を想って泣いているんだろう?