2011年6月10日金曜日

全日本選手権という感覚

全日本選手権という場に始めて立ち会ったのは、2009年12月に、金沢で開催されたシクロクロス選手権でした。

この時は、シクロという競技を見るのも始めて、全日本という空気を感じるのも始めてで、全日本ならでは、という空気感よりも、シクロという競技の美しさにとても感銘を受けました。

ただ、大会後、インタビューを受ける辻浦選手の充実しつつも、どこか放心した表情がとても印象的でした。


ロードの全日本選手権をはじめて撮影したのは、2010年6月の広島大会です。

事前にシマノの野寺選手が、この大会をもって引退される事を表明され、事前に野寺選手の写真を集中して編集していた事もあり、開催前から自分の中で、独特の緊張感を持って迎えた大会でした。

撮影ポイントはいつものようにKOM付近。

本格的に国内のレースを見始めたのは同年からでもあり、比較する対象が少ないのですが、それでも、他のレースとはまったく空気感が事なりました。

まず、他の大会より、圧倒的に展開が早く感じます。
誰もが、そして、どのチームも一番望むタイトルなので、基本戦略は、

「全力で他チームの戦力をそぎ落とす」

という展開のようです。

時期的にも高温多湿で、見ていると、なるべく楽な展開にならないように、危険度の高い選手が高速で逃げ、プロトンは高速でひっぱられて行きます。

逃げが状況を安定化させるのではなく、逃げが自滅と引き替えに、何人もの他チームを道連れにしていく印象です。

戦略的にはもっともシンプルな形を取るのかもしれません。

ボクシングで至近距離に対峙する二人のボクサーが、酸素が続く限りお互いのボディーの打ち合いをして、先に酸素が切れた方が負ける、みたいな印象です。

スマートな戦略や、駆け引きがあるのではなく、戦争というか喧嘩に近い。

それはとても選手の表情に表れます。

多くの選手は、今までに見たこともない表情になり、プロトンの中の呼吸音も、かなり荒く、怒号も多い。


何人かの選手は、カメラのプレビューウィンドウで確認しても判別出来ませんでした。


If You Love Somebody, SET THEM FREE.

If You Love Somebody, SET THEM FREE.

If You Love Somebody, SET THEM FREE.

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If You Love Somebody, SET THEM FREE.

If You Love Somebody, SET THEM FREE.
If You Love Somebody, SET THEM FREE

If You Love Somebody, SET THEM FREE.

If You Love Somebody, SET THEM FREE.

YUKIYA ARASHIRO : JOY

CHIKA FUKUMOTO : Le Rouge

KANAKO NISHI :le rouge

最終周回-1回のKOM。

KOM付近では、平坦よりよほどスピードが落ちるので、僕はある程度慣れている事もあり、カメラをパンして追う事を失敗した事はありませんでした。

でも、この時、数名の危険な選手がアタックして、プロトンがプロトンがそれをつぶそうと叫び声と共に加速し、見た事もないスピードでKOMを通過し、はじめて、ファインダーからロストしました。KOMポイント周辺で、あれほどのスピードを見た事はありませんでした。

その時の叫び声の波とともに、津波のように押し寄せるプロトンは、今でも記憶に焼き付いています。


そして、一番印象的だったのはゴール後。

ナショナルジャージを獲得した選手の、突き抜けるような晴れやかな顔。

敗退した選手達の、虚脱と葛藤の表情。

あれほど、人の気持ちがあふれ出る表情は、今まで見た事がありません。


YUKIHIRO DOI :lamentando
HIDENORI NODERA :amorosamente
YUSUKE HATANAKA :mezzo piano

YUKIYA ARASHIRO  :le visage

TAKASHI MIYAZAWA :brillante




年に1回だけレースを撮影出来るとしたら。

例えその候補が、ゾンコランや、トゥールマレ、あるいは世界選手権だったとしても。

僕は全日本選手権を選ぶはずです。

もちろん、常にファインダー越しに見ている人達だから、というのもあります。

そして、なにより、アルカンシエルは「夢の称号」だけど、ナショナルは「取らねばならぬ称号」として、多くの選手が思っているように見えます。

それだけに切迫度は強いんでしょう。


今年は撮影に行けるレースは、熊野、全日本ロード、シクロ の3つだけです。

全日本は今年最後のロードレースです。

今年、どのような光景が、ファインダーの向こうに展開されるのか、楽しみなような、ぞっとするような、不思議な感覚です。



会場に少数ですが、ポストカードを持って行きます。
特別な大会の時にポストカードを持って行きます。

なぜポストカードを作るのか?と言われても、明確な答えはないのですが、年賀状を出さない僕の、時候の挨拶みたいなものかもしれません(笑)


大々的に配るわけでもなく、少数持って行くだけなので、見つけたら声をかけてください。


今年はどのような表情が見られるのか、とても楽しみです。


会場でお会いしましょう。

[Flickr]全日本選手権RR&CX
[Flickr]全日本選手権RR&CX

ポストカード:MODE-JPRR2011(25-26.Juin.2011)
ポストカード:MODE-JPRR2011(25-26.Juin.2011)[SET THEM FREE]