2010年12月23日木曜日

LOVE IS.

Flickrで

「サイクリストの肖像 NOT LOVE BUT AFFECTION」

を開始した2009年9月。

フランスからメールを頂きました。

“技術的に見るべきものはなにもない。
だけど、ライダー達への愛と敬意に溢れていてとても良い写真だ。
それは、写真にとって一番な事なんだ。”



このメッセージは本当に嬉しくて、僕の基準の視点になっています。


2010年5月。

写真を見た知人からメールを頂きました。

“あなたの写真は欲望にまかせて撮影していて、
被写体への愛も敬意もない。
被写体を蹂躙するだけ。
あなたの写真は、被写体も、ファンも、誰も望まない。”


このメッセージはかなり考え込んでしまいました。

「被写体への愛と敬意」

同じ価値を、この二つのメッセージはまったく真逆に評価しています。


「自分は写真を撮る時、その被写体に愛と敬意を持っているか?」


その時は、なにかそれなりの反応を返したはずなのですが、明確な自信を持って使った言葉ではありません。
おそらく、かなり狼狽して、手持ちの言葉を集めて組み立て、それで身を守ろうとしたんだと思います。


おそらく、写真を撮影する時に、誰もが被写体(人物であれ、自然であれ)に愛を感じるからこそ写真を撮るのでしょう。


報道関係者は中立的視点だと言われますが、やはり人間である以上、中立的視点というのは不可能で、なんらかの感情は出るはずだし、その感情が写真に色を与え、だから、報道の写真でも芸術性が認められるんだと思います。

凄惨な戦地や被災地でも、フォトグラファーはその現実も捕らえる一方、その中の人の美しい側面の姿も捉えます。


でも、それだけだろうか?



自分の内面を掘り下げていくと、そればかりではない側面も見いだす事が出来ます。
いろんな言葉で表現できますが、根本は


「良い写真を撮りたい」


というエゴです。

「愛と敬意に溢れた写真」

とはいいつつも、その根本的な原動力は「エゴ」です。

「相手の為を思い、相手の為に撮影する」

そういう人も、もしかしたらいるかもしれない。

例えば

「ロードレースを愛していて、その振興の為に撮影する」

とか。

それを考えた時、ふと思ったのは、僕はロードレース全体という視点で、レースを撮影した事がない。


いつも見ているのはライダーだけ。
それも、ライダーの1/1000 secの時間。

「サイクリストに対して愛はあるか?」

と訪ねられたら、それは自信を持ってあると答えられます。
彼ら彼女らの、鍛錬し、逆境に挑戦し、勝利し、破れていく姿は、本当に尊敬するし、美しいと思います。

でも、僕が向ける愛情のスコープは、その個人止まりで、どうしてもそれより上位の「競技全体」という視点では捉えられないのです。

その個人に向けているから、僕は撮影した写真をその人に見て欲しい、渡したいと思うんだと思います。


ある意味、写真は、僕にとっての「手紙」みたいなもの。
それも少年が深夜2時に書いた恋文のような、自分の内面をさらし出す恥ずかしい手紙。

僕は写真を始める2008年以前、ほとんど人付き合いというものはなく、他人に感心がなく、プライベートで人に話しかけるなんて想像もしたことがありませんでした。

写真を始めた事で、世間には自分以外にも人がたくさんいて、それぞれの価値で生きて、そして戦っている。

もの珍しくて観察し、どういう人なのか知りたくて、手当たり次第に手紙を書いている。

そんな状態でした。

コミュニケーションを知らない異星人が、写真という交信手段を手に入れたようなものです。

それもスパムメール並の勢いで。

それは第三者から見たら、とても奇異で、愚かで、相手の気持ちを無視した行為に見えたかもしれません。

それはコミュニケーションとはいいつつも、一方的に自分から発信するブロードキャスト。
エゴから発生する行為です。愛があったとしても。

2010年6月

京都で開催された写真展「PEDAL STORIES」で、フォトグラファーの竹之内脩兵さんとお話する機会がありました。


“どんなに素晴らしい写真でも、遠くから相手を撮っているばかりだと、それは「盗撮」と同じだと思います。
相手の前に自分を晒し、そこでガチでせめぎ合ってこそ、なにか価値のあるものが生まれるんだと思う”




彼のこの言葉はとても印象的でした。

人を撮影するのは、やはり、どんなに言葉を飾っても、その人の権利を侵害する行為である事には代わりはありません。

僕は自分という存在を隠す事で、その人の自然な表情が捕らえられる、と考えていました。
でも、やはり、それで撮影した写真に自分はいない。少なくとも、自分の思いは入っていない。


僕はとても単純なので、その言葉を直球に受け取り、自分から声をかけ、話をし、そして、正面から相対して撮影しようと思いました。

今までは、それは単なる記念写真で、価値はない、と思っていました。
でも、愚直なこの方法は、確かに自分が働きかけないと出来ない。
逃げる事と言い訳は出来ない。

少なくとも、自分が撮った写真だと言える。


2010年8月

自分のエゴに気づきながら、そのエゴを消化できないまま、シマノ鈴鹿ロードに行きました。

あるチームのライダー達を撮影する為です。
春からメールでチームと交信を続け、自分の写真を説明し、じっくり関係を醸造してきただけに、その撮影はとても楽しみでした。

とても喜んで頂けて、言葉を交わし、それぞれポートレイトを撮影しました。
それは、今年、長い間、自分が模索していた、

「相手に受け入れられた上で、正面から撮影する」

という行為です。

とても自然な表情で、それはある意味、自分が理想とする撮影でした。

でも、それと裏腹に、心は晴れません。

ライダー達は僕を信頼してくれている事が表情から伝わります。
それは、時間をかけて説明したからこそ出来た事です。

でも、その撮影の動機は、

「より良い写真を撮りたい」

というエゴだと気づいているので、その信頼に対して、後ろめたいような、申し訳ないような複雑な気持ちでした。



2010年10月

世界選手権に行く予定が、交通事故に遭遇し、自宅で療養を続けていました。
今年中にロードレースの撮影をするのは不可能と考え、ベッドの上で、今年撮影した写真の整理をしていました。
タグをつけていく時、ふと思って、今年、話をして、正面から撮影したライダー達の写真を並べてみました。

豪快に破顔している顔
はにかんでいる顔
少しとまどって、硬い表情になっている顔
僕が言った冗談に吹き出している顔


見ていると、それぞれ撮影した瞬間の事を、すごく些細な事まで思い出します。

光の加減
風や空気の流れ
周りの音
話す時の視線の動き
話した内容


確かに同じフォーマットで、笑顔が並んでいるだけです。
そこから、いろんな情報を読み取れるのも、たぶん、フォトグラファーだけ。

でも、そこには、紛れもない、自分が写っているんです。

アイウェアに反射して。
瞳に映って
僕の話に興味を示して
僕の冗談に破顔して


それは、きっかけはエゴであるかもしれないけど、その人との時間を共有し、話をして作った、紛れもないコミュニケーションです。

泥臭く、野暮で、直球な方法だけど、それは明らかに

「愛情を表現している」

と言えると思います。


なんて遠回りで、面倒で、大げさな手紙(笑)

でも、結局、自分がした事を、最後に自分が納得出来るのは

「悔いがないぐらい真剣に考えて、そして手を動かしたか」

だけなのかもしれません。


いろんなSmilesを見ながら、そんな事を思っています。


Happy Christmas.


23-Dec-2010

kiguma



FUMIYUKI BEPPU :Le Blanc Suprême-11 
Retired KEIRIN RIDER
CRAZY FOR BASSO
SHINICHI FUKUSHIMA:  Le Blanc Suprême-67
YOSHIMITSU HIRATSUKA: Le Blanc Suprême-78
HIDENORI NODERA  : Le Noir Suprême-64
TAKASHI MIYAZAWA : L'icône de blanc
CLAUDIO CORIONI  :Le Blanc Suprême-97
OSAMU KURIMURA : le Rouge.
KENSHO SAWADA  :le visage
SAKIKO SATO : Le Blanc.
HATSUNA SHIMOKUBO : Le Blanc.
WAKA TAKEDA :Le Blanc.
AYAKO TOYOOKA :Le Rouge.
MOTOI NARA   : Le Blanc Suprême-87
HISAFUMI IMANISHI :Sorrisi/Sonrisas
COLON
TIME KEEPERS
Sign
CHIKA FUKUMOTO : cantabile (take-2)
SAKIKO SATO : expressivo(take-3)
YUKIYO HORI :vivisimo
FUMIYUKI BEPPU :vivo
YUKIHIRO DOI :stringendo
TARO SHIRATO :con anima
HIDENORI NODERA :pomposo
YUKIHIRO DOI [Le Visage]
CHIKA FUKUMOTO : Cantabile
YOSHIYUKI ABE : brillante
KANSAI-CYCLO-CROSS St-4 BIWAKO42