ラベル "TAKUMI BEPPU" の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル "TAKUMI BEPPU" の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2011年2月20日日曜日

Talkin' with TAKUMI BEPPU

IMG_6369

Q
友人が、何回か匠さんにサインをもらったので見覚えがあるかと思いますが、昨年、僕が撮影した写真で作った写真集です。
表紙の史之さんは、09年の鈴鹿ロードで撮影し、僕が本気で写真に取り組もうと思った切っ掛けになった写真です。
匠さんの写真は、全日本の時に撮影した写真です。
僕のそれまでの匠さんのイメージを覆す、本能むき出しの表情で、人に対する見方がとても変わった一枚です。

A
覚えています。
僕はいつも真剣に走っているつもりなんですが(笑)

Q
でも、基本ポーカーフェースでしたよね(笑)
その後、引退を表明されたのを見て、なにかこの表情も、いろいろな御決意が現れていたのかな、と想像していました。

A
そうですね。
不思議ですね。
プロトンには多くの選手がいて、高速で通過していく。
それなのに、あなたがこの瞬間を捕らえたというのは、とても不思議な気持ちになります。
縁、みたいなモノがあるんでしょうね。

Q
そうですね。
ロードの写真は、基本狙って撮影出来るものではないと思っています。
どのように優れた技能を持つプロでも、やはり最後は縁(運)に左右される。
縁がなかったら、僕も、多くの人も、あなたのその時の気持ちを知らなかったかもしれないですね。

A
本当に。

Q
以前、匠さんが、Twitterで、
「現役の時は、自分を追い込むジョギングしか出来なかった。引退してから、やっとゆっくり走る事が出来た」
とTweetされていたのがとても印象的でした。
現役は退かれたけど、自分を見つめる幅が出来たという事なのかもしれないですね。

A
ええ。
現役の時は、がむしゃらに追い込んでばかりで、あの感覚はとても新鮮でした。
ゆっくり走るなんて考えた事もなかったんですが(笑)
良い事なんだと思います。

Q
切っ掛けになったお二人に写真をお渡しできて本当によかった。
これからもご活躍を。

A
ありがとうございます。


IMG_6371

IMG_6702


20-Feb.-2011

伏見/名古屋
愛三レーシング ファン交流パーティー

2011年2月9日水曜日

Alternative Mode

別府匠選手を始めて見たのは、NHKの2008年の番組でした。


様々な趣味の入り口を、その趣味に関心のない人向けに紹介する番組だったので、作りは若干色物的であり、


「アスリートの人って、こういう紹介されるのは、内心ではあまり嬉しくはないのかな?」


と思って見ていました。

Japan Cup 2009のチームプレゼンテーションで、偶然、前から2列目という好条件で、200mmのレンズでそのポートレイトを撮影する機会があり、改めて見ると、とても強いオーラと視線を持った人だと感じました。

やはり印象的なのは、その目です。


TAKUMI BEPPU :molt Adagio

If You Love Somebody, SET THEM FREE.



歌舞伎の役者は、演技の多くを目で語るので、とても強い視線を持っているのですが、匠選手も、それと同じ空気感を持っています。


NHKの番組とはまったく事なる、トップエンドに身を置くアスリートの凄みを感じました。


レース中の匠選手を撮影したのは3回。

Japan Cup 2009
J-Tour 2009 飯田
全日本ロード選手権2010

前述の2回のレースを撮影して感じたのは、レース中に表情がほとんど変わらず、状況を冷静に判断するクレバーな選手、という印象です。

TAKUMI BEPPU :Voice of SIREN

表情が変わらないのは、決して苦しくないからではないでしょう。
様々なレーサーの表情をみていて、すごく苦しそうな形相になる方もいれば、匠さんのように冷静で、熱量を内に秘めた表情の方もいます。
選手ごとの特性ですね。


全日本ロード選手権2010では、僕は山岳ポイントで撮影をしていました。

オーダーのあるプロという訳でもなく、特定の選手のファンという訳でもない僕は、プロトンが接近してきたときに、ファインダーで70mmぐらいのワイド端にしながら、どの選手にロックするか瞬間に判断します。

それは明確な基準があるわけでもなく、方程式があるわけでもなく、あえて言うなら、

「プロトンの中で一番目に飛び込む力を持っている選手」

言うなれば「直感」です。


その時、プロトンの進行方向に向かって左手に位置していたブルーのジャージの選手にロックしました。

文字通り、浮き上がって見えたのです。

通過を連射し、200mmの画角からアウトするまで追いつつけました。

ブルーのジャージだったので、愛三の選手だとは分かっていたのですが、通過後にプレビューで確認しても、どの選手なのかまったく判断できませんでした。


撮影後、ゴールに移動する時に、WLRRの女性にプレビューを見せて確認してもらいました。

その方も当初分からず、しばらくプレビューを眺めた後に


「匠さん?」



TAKUMI BEPPU :Fortissimo



今まで見た事のある内に秘めたクールな表情ではなく、ある意味、泥臭いともいえる、なりふり構わないエネルギーの発散。

僕はその表情を見て、全日本というレースが持つ格式を強く感じました。
全日本ロード2010で最も気に入っているショットの一つです。

昨年の9月、Twitterで匠選手が誕生日だと呟かれていました。
その時のメッセージで、全日本の時の写真を、お見せする事ができました。
その際に友人が

「この写真のように、来年も全力で戦っている姿が見たいです。」

とメッセージを送ると、匠選手の返答は

「いつでも全力で戦っているつもりです(笑)」

と苦笑混じり。




2010年12月27日

匠選手は現役を退き、新たな挑戦として監督となる事を公表されました。


昨日、知人が僕が昨年の写真で作った写真集「NOT LOVE BUT AFFECTION」を見て感想を呟いていました。


「まったく見た事のない、見ていると辛い表情だけど、もうこの一瞬は見られないのかと思うと、撮っておいて下さって本当によかったと思います。」



TAKUMI BEPPU: Inferno!!



写真は残酷だと良く言われます。

それは真実のみを記録し、隠しておきたい影も全て白日のもとにさらし出されてしまう。

「だから、あなたの写真は嫌いだ。あまりにも生々しく遠慮がないから。」

と言われる事も多い。


この写真を見た時、

「せっかくハンサムな被写体なのに、わざわざこのショットを写真集に選ばなくても」

と思う人はとても多いと思います。

でも、僕は純粋にこの表情がとても美しいと思っています。
誓って、好奇の視点ではない事は確かです。


なぜなら、僕はこの表情が、このレースに賭ける匠選手の、駆け引きなしの「素顔」だと思えるからです。


匠監督になられた今思うと、この時の、この表情は、いろいろな意味を持って僕の心に迫るものがあります。


人の写真を撮る事は、いつも罪の意識があり、意味がない行為だと言われると、確かにそう感じる事が多い。


誰もあなたのしている事を望んでいないと。


でも、現役を退かれる選手に写真を渡す時、いつも罪の意識は薄らぎ、少し晴れがましい気持ちになります。


それは写真が「残酷な真実」ではあるけど、それは反面、「紛れもない真実」でもあるからです。


その人が本気で挑み、戦い、輝いていた記録として。

そして、少なくとも僕はそんなあなたを見ていた、というメッセージとして。