2011年7月1日金曜日

ゴーストはささやく

仕事でも、学業でも、

年に一度、全てを犠牲にしてでも得たい成果というのは、頭に浮かびません。

受験でも、論文でも、大きなプロジェクトの契約でも。
人生で必ずその人の節目となる重要な転機は巡ってきますが、「毎年」の頻度ではまず出現しないですよね。

それほど重要な分岐点の選択が毎年出現すると、まず一般人は精神的に耐える事が出来ないと思う。

レースの世界にはその「分岐点」が毎年あります。

ナショナル・チャンピョン・ジャージ

ライダーの称号をジャージで表す、という自転車世界の特殊な事情の為、他のスポーツに比べて、よりチャンピョンの称号は重いように感じます。


ライダーの方達は、口々に、

「絶対に取らねばならないタイトル」

と呟きます。

そのジャージの重さは、傍観者とも言える我々ファンは、頭では理解していると思っている。

「夢」や「血の重み」等、

様々な美しい言葉でラップする事は可能です。


だけど、僕が去年、初めて全日本選手権を見た時、
もっとも印象的だったのは、

「タイトルをつかめなかった選手達の表情」

でした。

完全に放心し、我を忘れ、その分岐点の瞬間を、瞳の先に再生しているような表情。


ナショナル・チャンピョンにかける選手達の思いは、言葉でで表現する事は不可能だと思います。

美しい言葉で飾るよりも、つきつめて、煮詰めて、たどり着いたその渇望は、「狂気」と表現してもいいのかもしれない。

全ての犠牲は、そのジャージに袖を通す瞬間の為。


獲得した瞬間、それは「失う恐怖」にかわるのかもしれません。


「絶え無き渇望」

言葉にするとそれが一番近いかもしれない。
でも、やはり言葉では難しい。

ひとつ言える事は、妥協なく全てを捨てて、単一の目的に挑む人間の表情は、本当に美しいという事だけです。



If You Love Somebody, SET THEM FREE.

YUSUKE HATANAKA :  Grave

If You Love Somebody, SET THEM FREE.
If You Love Somebody, SET THEM FREE.