2011年8月15日月曜日

Stress

「ストレス」はネガティブなイメージで語られる事が多い。


特に仕事上のストレスだと、体を壊したりのマイナスイメージがつきまとう。


小さいメモパッドを一日持ち歩いて、ちょっとでもイラっとした事を感じたら、書きだしてみると面白い。


我々がいかにストレスフルな世界でサバイバルをしているか分かるから。




日本人は美徳とされる謙虚さで、それを飲み込む事が多い。
外界からのストレスにさらされても、それは自分がアウトプットしなければ日常は変化なく平和だ。


その行為に「我慢」という称号を与え賞賛するのは、美しいけれど、残酷な文化だ。






エンジニアにとっての仕事上でのストレスとは、ほぼ例外なく


・合理性の欠如


だと思う。


昔、同僚が、同じ職業に携わる人間の気質を見事に例えた。




「楽をする為なら、喜んで徹夜するね。」




彼が言いたかったのは、毎日のムダな1時間の残業を生む温床になっている繰り返しの処理、無駄なビルドの待ち時間をなくす為なら、喜んでそれを自動化するタスクを書き、ビルドを効率化するためにコードを最適化する、という事だ。


結局、ストレスの本質は




<私はこうしたい(あるいはこうありたい)>




という理想を、外因から規制される事によって生じる摩擦だ。




日本人は、それを心の中にしまいつつ、なんとなくお酒の席とかで口に出して、それでバランスを取る人が多い。


状況によっては、自分の感じたストレスが検討違いだったり、自分に要因がある場合もあるだろう。


だけど、それは洗い出してみないと原因がわからない。








週末に行うルーティーンのタスクで、その週をふりかえる事をしている。


記述はすごくカンタン。




・楽しい事
・悩ましい事
・イライラする事
・増やす
・そのまま
・減らす


この項目について、自分の所見を書いていくだけ。


これは、あるAgile開発の本で、チームミーティングで行う内容として例示してあって、そのシンプルな分析手法をすごく気にいって取り入れた。


(通常、Agile開発の本って、どうしても自己啓発っぽくなって嫌いなんだけどw。でも、おいしいところだけをつまみ食いする価値はあると思う)


上の3つが事象で、下の3つが対策だ。


実際にやってみて感じたポイントは


「自分の正直な気持ちを、飾らずに書くこと」


これは自分が悪いから、とか、自分の実力が足りないから、とか最初から判断してしまうと、ストレスの本質がわからないままだ。


とりあえず、書きだして眺めると、それだけで不思議と感じていたストレスが軽減されるのが面白い。


これは超自然的な現象ではなくて、頭の中にあった漠然とした違和感を、自分の頭から切り離して、紙(あるいは電子データ)という媒体の上に置き換えたからだと思う。


頭の中にあった漠然としたストレスに対して、自分は今まで渦中の当事者だった。
それを言葉に置き換えて頭から切り離す事で、ストレスを客観視している状態になるんだと思う。(溺れた自分のビデオを見てるように)




言葉にするといろんな事が分かる。







<イライラする事>


・撮影の時にホテルで眠りにつくまでの時間が長い


↓なぜ?


・カメラのバッテリーは全部で4つ。それに対して、新型のチャージャーは2つ。つまり、一度フル充電してから交換する必要があり、他の仕事をしながらチャージを待っていると、完了を気にしなければならずない。
しかも、疲れているときには、最悪の場合、1回のチャージで寝てしまう。


↓なぜストレス?


撮影当日にバッテリーがチャージできていないのが最悪だが、チャージを気にして仕事をしながら待っているのもストレス。


↓つまり


漠然とした気にかかる事を頭に入れて仕事をしている事はストレスフルな状態




↓対策として


<増やすもの>


・バッテリーチャージャーを2つ追加し、合計4つにする。


↓なぜ?


チャージを開始すれば、寝てしまっても充電は完了する。
チャージさえはじめてしまえば、バッテリーの事は忘れる事ができる。




ストレスの内容によっては、対策がもっと複雑になるものもあり、なにかを買って終わり、とはならない事もある。




でも重要なのは、ストレスの内容を客観視する事だ。
僕の経験上、仕事のストレス比重の大きなものは、些細な仕事のフローの非合理性だし、ささいなフローを改善するのに要するコストは、大抵コスト計算の必要もないぐらい低い。
(例えば、複数の場所で仕事をする必要がある場合、その先々で、常に同じ文房具とメモ帳が揃っている事でとても快適になる事もある)


仕事上の遠大な目標のプランニングや、人類誕生の秘密に対する考察も重要な事だが、大きなスコープで考える前に、日常の些細なストレスを削るのはとても大事な事だと思う。


ゲルニカのような素晴らしい壁画を構想しているのに、スケッチブックがB5サイズしかないようなものだ。




不要なものはどんどん捨てましょう、という運動が流行っていると聞いたけど、僕は小さいストレスはどんどん捨てる、というのがいいと思う。








参考:


ふりかえりに関して
「アート・オブ・アジャイル・デベロップメント」
(オライリー・ジャパン)


記憶せねば、というストレスに関して
デビット・アレンのGDT(Get the Things Done)に関する書籍全般。