今の時代は「気持ちの反射」が世の中を動かしているそうだ。
人の気持が、ピンボールのようにいろんな人の気持ちを突き動かし、それは巨大な波となって地球を覆っていく。
そのピンボールは、時には独裁者を倒し、時には恐怖を拡げ、時には巨大な暴力を伝播する。
ピンボールは考える時間を与えてくれない。
そんな事を感じて少し疲れていた時、ふと、2009年のジャパンカップで見たイェンス・フォイクトを思い出した。
それまでの彼のイメージは、まさしく「漢」というもので、厳粛なイメージがあった。
(ドイツ人でもあるし(笑))
レース中の彼は、いつもツールでプロトンを破壊しようとする鬼神の表情。
だけど、チームプレゼンテーションの舞台に立っていた彼は、ロード選手としては逞しい骨格と、軍人のように伸びた背筋は想像通りだったけど、意外だったのは、その笑顔のナチュラルさだった。
とても自然で、飾ったところがなく、控えめだけど、とてもチャーミングな笑顔だった。
やはり彼も、僕に人の「多様性」を教えてくれた。

僕は彼の横顔を思い出し、その時の写真を見た。
膨大な数のモノクロを処理してきて、このとき選んだクリーミーなタンは初めて使った色だった。
なんとなくカフェオレが飲みたくなった。
単純な理由で、色がカフェオレを連想させたんだ。
この写真でタンブラーのラベルを作り、スターバックスでソイラテのエクストラショットを注文した。
ぼんやりと、タンブラーに収まった写真の彼を眺めながら、こんな言葉を思い出した。
弱い者ほど相手を許すことができない。
許すということは、強さの証だ。
マハトマ・ガンジー
ほんの少し元気になって、また仕事に出かけていった。